科学衛星による電磁界観測に関する研究
 みなさんは、宇宙空間とはどのような空間だと思いますか? 一般に宇宙空間は真空であると思われています。実は宇宙空間は希薄なプラズマで満たされています。このために宇宙空間ではさまざまな自然現象が起こっています。この自然現象を解明するために今までに多くの科学衛星が打ち上げられてきました。
 当研究室では今までに磁気圏探査衛星「あけぼの」や火星探査衛星「のぞみ」などの開発にかかわってきました。このような宇宙探査の計画は現在も多くの計画が進行中です。現在当研究室では、今までに観測したデータの解析や実際に衛星に搭載する電磁界センサの開発・解析などの研究をしています。
シールド技術に関する研究
電気定数推定システム
 電車やバスに乗った際に「車内では携帯電話の電源をお切りください」といったアナウンスを耳することが多くなりました。これは携帯電話の電磁波が、心臓ペースメーカの誤動作を引き起こす可能性があるためです。そこで、そういった問題を防ぐために電磁シールド材が開発されました。
 電磁シールド材の性能はシールド効果により決定され、それぞれ材料固有の電気定数(誘電率、透磁率、導電率)を持っています。しかし、シールド効果を知るには、いったん電磁シールド材を作ってみなければわからないものであり、また理論的に電気定数を求めることが困難でした。しかし、私たちは数値積分を用いることにより電磁シールド材の電気定数を理論的に導出し、電磁シールド材特有の電気定数を推定するシステムを開発しました。このシステムを用いることにより、今まで知ることができなかった薄布の電気定数を知ることができ、各周波数で必要なシールド効果を指定することにより効率の良いシールド材開発の一助となると考えています。
温熱療法による癌治療装置の開発
イメージ図  ここ数10年間で、日本人の食生活が欧米風に変化したこともあり、癌が原因で亡くなる人が多くなりました。いろいろな病院で癌の治療法が今も研究されていますが、決定的な治療法はまだ確立していません。現在行われている癌の治療法として、手術・放射線療法・化学療法・免疫療法などがありますが、患者さんへの負担が大きいにも関わらず、「絶対に癌を治せる!」というものではありません。
 そこで、当研究室では「温熱療法」という治療法に注目しました。温熱療法とは,癌細胞は正常細胞に比べて熱に弱いという性質を利用した治療法で、実際には、癌細胞を一定時間加温し癌細胞を死滅させます。もちろん、温熱療法も「絶対に癌を治せる!」というものではありませんが、癌細胞に狙いを定めて治療するにも関わらず、患者さんへの負担が小さいという点で最近注目を集めています。
電磁波源可視化システムの開発
可視化実験結果 可視化イメージ  この研究テーマでは、目に見えない電磁波を「可視化」する技術を研究開発します。電磁波を目で見る事はできませんが、パソコンや携帯電話などの電子機器に囲まれて生活している私たちは、常に電磁波にさらされています。その中で、電磁波が他の機器に誤動作を起こさせる影響などが考えられるようになってきています。
 そこで、電磁波を見えるようにすることで、こういった問題に対する対策として有用な情報を得ることができると考えられます。当研究室では、これまでに電磁波源可視化実験を通して、コンピュータディスプレイ上に電磁波源の可視化結果を表示させることに成功しています。

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電離層電波伝搬に関する研究
 地球の上空約60km以上の希薄な大気は、太陽から放射されるX線や紫外線などにより電離され、正イオン、自由電子、中性分子が混在した電離層とよばれる広大な領域を形成します。この電離層は、電磁波伝搬に大きな影響を与え、地上または宇宙では、さまざまな波動現象が観測されています。
 電離層電波伝搬において、当研究室では、電離層中のVLF波伝搬の理論解析法(full-wave analysis)の確立から始まり、オメガ局からのVLF波伝搬、ホイスラビーム波の伝搬、雷空電などの解析に成功し、電磁波の理論解析の分野で世界に貢献してきました。最近では、雷雲上空の発光現象や、地震に伴った電磁波伝搬といった現象について、研究を行っています。
RFIDに関する研究
RFID  RFID(無線タグ)とは、バーコードや値札のようなタグそのもの、及びタグを運用するためのシステム全体を指し、家庭やオフィス、流通やマーケティングなど様々な分野に革命を起こしています。無線タグとバーコードのもっとも異なる点は、タグの情報を読み書きできる点です。また無線タグという名前の通り、非接触(数mm〜数十cm)で情報の読み書きができます。そして、一度に複数のタグの読み書きできるため、例えばタグのついた商品をレジに通すときでも、無線タグを用いれば一度にすべて通すことができます。
 当研究室ではタグそのもの及びレジのような読み書き側を含めたRFIDに関するシステム全体の技術を研究開発しています。